やはり違う。

今日つくづく、「原料に何を使うかによって、味は完全に変わるのだ。」という事実を、まさに身を持って体験した。これ、当然といえば当然だけど、実際に体感すると、強烈な説得力を持つものである。頭での理解を超える、というのはこういうことなのかもしれない。

というのも、私は少し前に果実酢やリモンチェッロなどを色々と仕込んでいたのだが、このうちの「バナナ黒糖黒酢」については、肝心の黒酢と黒砂糖に関して、納得の行くものがすぐに入手できなかったことから、最初に身近な所で調達可能な材料を使い、「取り敢えず、ものは試し」と仕込んでみた。
その後、数日遅れで、美味しいと評判の玄米黒酢と沖縄の黒砂糖をゲットして、今度はこれらを使ってバナナ黒糖黒酢を仕込んだ。けれども、両方を仕込んだ時点では、材料が違うから、おそらく味に違いが出るだろう...とか、そんなことは一切考えてなかった。

そして、漬け込む期間が過ぎ、当然最初に仕込んだ方から飲むことになったのだが、「バナナと黒糖」ということで美味しくないわけがなく、豆乳で割ったりして家族で好んで飲んでいた。これはこれで美味しかった。ただ、何となく、とんがってるな、という気はしていた。でも、それは、「なにか思い当たることはなかったか?」としつこく聞かれれば、「今にして思えば、どことなくそんな気もしてたかな。」と答える程度のことであり、毎日飲む分には何の問題もなかった。現に「美味しい」と思っていた、さっきその次に仕込んだバナナ黒糖黒酢を飲むまでは...。

こだわりの無農薬玄米を使ったという黒酢と、沖縄の黒糖(これは別に普通なのかな。)で仕込んだ方のバナナ黒糖黒酢は、最初のものがなくなるまでずっと漬け込んであったため、その間にも引き続き熟成されていたお陰もあるのだろうが、最初に一口飲んで、そのまろやかさと濃厚さに驚いた。

めちゃくちゃ美味しい...!!!

使うものによって、ここまで味というものは変わるのか、と心底驚いた。
もちろんこれまでそういう例がなかったわけではないけれど、なぜだか今日は本当にびっくりした。というより、正直感動した。いいものを使うと、美味しいものが出来るんだ。

きっと研究もそうなのだろうな、とふと思ったものの、次の瞬間、

「材料がどんなに良くても、それを扱う側の能力不足でせっかくのものをダメにすることだって、あるよね...」

と、何ともおぞましい考えが浮かんでしまって、ゾッとした...。そんなことをしでかさないように、まだまだ精進し続けなければならん、バナナ黒糖黒酢のことでこんなことまで考えてしまった自分が、結構恥ずかしい。

でも、それって真実だと思う。
とある研究会でのこと。ある方が発表された後、いつも本当に有意義で、「勉強になるなあ!」という発言をされる方(私よりも随分とお若いのに、知識も豊富で、様々なことに造詣が深く、私は密かに尊敬申し上げている。飄々とした雰囲気とその聡明さは、何とも羨ましい限り。)が、その方の発表のテーマの根幹に関わるような、大変重要な指摘をなさったのだけれど、何と、発表者はそれを全く意に介しておられない様子で、非常にもったいないことだと他人事ながら残念に思ったことがあった。

言ってみれば、これなんかは材料は様々あるのに、そして、今まさにそれの捌き方も誰かがこうして親切に提案してくれているのだから、せっかくだし試しに取り入れてみればいいのに、なぜかまだ素手で一人奮闘しようとしているようなもので(しかも自ら好んでそうしているようにさえ見える)、そのままだとキレイに捌けるまで無駄に時間が過ぎやしないかしら、下手に捌いて真実が見えなくなってしまわないかしら、などと内心ヒヤヒヤしてしまった。発表者が解き明かそうとしていることの、大きなヒントがまさにこの方の指摘の中にあると思われるのに、試しにその方向で少し調べるくらいしてみればいいのに、発表者はなぜかそれを頭ごなしに拒否しているようで、勿体無かった。ま、完全なる老婆心だけど。

でも、自分も同じことをしていないなんて保証はどこにもない、ふとそう思うと、途端に空恐ろしくなってしまった。たとえ良い材料があっても、こちらにそれをちゃんと美味しく調理出来るだけの知識と技量がなければ、材料自体を殺してしまうことになる、食も研究もその点では同じなのだと思い至った次第。

また話が逸れてしまった。ま、いっか。
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by getty-ih | 2015-05-08 13:15 | お料理&グルメ